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「もしかして、あいつを助けたいと思ってる?」
耳削ぎ地蔵に助けられた話に区切りがついたところで、俺は唐突にそう切り出した。
「え!?」
あからさまに虚を突かれた彼は、狼狽えて手を振った。
「まさか、関わりたくないと思ってるよ、怖いし……」
「そうかな?」
「どうしてそう思うの?」
南風に葉が波打ち、揺れる木洩れ日を手で避けながら彼は聞く。
「何と無く、あいつを出してあげたいと思ってるんじゃないかって」
「あいつが病院から出て行ってくれたらと思ったことはあるよ、でも、出て行くのは僕の方だ」
優しげな眼差しが病院の入口から、自然石を使って舗装された美観を重視した地面に落ちる。
「僕、病院を移るんです、もっと大きいところじゃないといけないみたいで」
零れた言葉が緑の葉と一緒に路面を転がっていく。
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