春来詠~the flowering season~

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  跡を残さず年は過ぎて 風が吹いて夢を迎える 時が運び 潮が満ちて やがて開くはあせない四季彩   降り注ぐ木漏れ日が 白い絨毯に反射して視界を照らす 目の前を流れる絹糸が 指に絡まればそれはやがて明日に繋がる   また出会える あの日のあの場所で 続く春桜の 赤い橋の下で     巡る巡るくるくるりと 季節を超えて 時代を超えて 思い孵すのは 繭に籠もった 儚く咲き誇った冬の手前のことだった     瞳で追い掛ければ眩しくて その先にはいつでも当たり前のように その輝きが止まずにある 鼓動は歩調を上げまた歩み始める     まだ消えない あの願いはあの涙は ここで再開の 喜びを上げたから     ホロリホロリと甦っては 暑い季節を 寒い季節を 繰り返しては 輪廻をしては 成長しないこの躯を憎いと嘆いた     満ちる満ちれば形作れば あの影がまた 揺らいで揺らぎ また喜びと 不安が襲い 淡い季節が桜を運んでくる     巡る巡るくるくるりと 季節を超えて 時代を超えて 思い孵すのは 繭に籠もった 儚く咲き誇った冬の手前のことだった  
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