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湖の中心地に近づくと、海水と混じっていない、別の湿地帯には水芭蕉が咲いていた。
「ここだけ咲いてるって事は海水が混じってないから?お父さん」
ドロシーが尋ねてくる。リリィからの話では、「お父さんと一緒に働きたいから勉強するんだ」と話していたらしい。
そのため私の知らないことまで知っていたりするので、困ることがある。
「よく知ってるな」
「図鑑に確か書いてたはず。群生して咲くんだよ」
フフンと満足げな顔だ。
まあ、頭でっかちにならないことを祈る。
「あっちには桜が咲いているわ。座れそうな場所もあるし、あそこでお弁当にしましょ?」
「まだ早いよ?時間」
「今は暖かくても、夜は寒いから早く帰った方がいいの。お父さんもドロシーも風邪引いたら困るでしょ?」
リリィはドロシーを優しくたしなめた。私がいなくても、妻のおかげで娘は健やかに育ってくれそうだ。
おかげで夫の立場がない。
リリィは昔、喫茶店で働いていたため料理が得意だ。
結婚してからもその腕が衰えるどころか、上がっている。
妻曰く、
「喜ぶ顔を見るのが好きなの。」らしい。
私はリリィの作る玉子焼きが大好きだ。それは娘も同じらしくいつも取り合いになる。
それは今日も変わらなく、「いい大人が大人気ないですよ」 とリリィに呆れた顔で言われてしまった。
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