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無題1
自分は幽霊だ、と言う少女に出会ったのは××××ほど前のことだった。
私が彼女に名を問うと、彼女は「名前はありません」と答えた。「名前がないなら、幽霊なのです。あなたも同じでしょう」そう言って少女は笑った。
そうだった。私も幽霊だったのだ。幽霊と会話できる存在がいるとしたら、その存在も幽霊なのである。今の私のように。
「それでは行きましょう」
彼女が言うので、私もついていく。少女の足取りは軽く、まるで生きているように見えた。
どこへ行くのかと尋ねた私に、少女は足を止めて振り向いた。
「どこへでも行くことは出来ます。あなたの行きたい場所はどこですか?」
私はしばらく考え込んだ。私はどこに行こうとしていたのだろう。ここはどこだろう。なぜ私はここにいるのだろう。
ただ立ちつくす私は、少女の暗い瞳を見つめるしかなかった。
「××××へ行こうと思っていたのではないですか?」
解答を出したのは少女だった。その言葉を聞いてようやく、私は自分の役割をしった。
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