鬼ごっこ

2/4
前へ
/39ページ
次へ
塾に通っていた私は、その日、遅くなってしまったので普段使いもしないバスに乗って家路についていた。 そして先程の言葉をかけられた。 唐突に、だ。 その、声をかけてきた子は私の同級生。 何を考えているか分からない、気持ちの悪い奴。 当然、その子の性格からか男の子は虐められていた。クラス全員での虐め。 それが中学生には何を意味するかは知りたくないほどに分かる。 「何よいきなり」 当然私も冷たく接する。こんな奴と仲が良いなんて思われたく無かったのだけど、私の拒否もお構いなしに男の子は喋りだした。 「話くらい良いんじゃないかな?別に君は喋らなくていいから僕に喋らせてくれよ」 そう言って男の子は私の隣に座って喋りだした。私は半ば無視する形で窓の外を眺めていた。 「僕は思うんだよ。人生は鬼ごっこなんじゃないかって。そして今僕は鬼なんだって」 何を言っているんだこいつは? いきなり突拍子も無い事を言い出した男の子を私は睨む。 「いつだって少数派は迫害される運命なんだ。そもそも昔話や鬼ごっこはおかしいんだ。だって鬼は少数、人々は多数、だったらなぜ人々が迫害されているんだ?違うだろう、鬼が迫害されるんだ。おかしいと思うだろ?君も」 おかしいのはお前の頭だろ? そんな目で見つめても男の子は話を続ける。 「今、僕は鬼なんだ。だから次の鬼は違う人になる。僕は人になれるんだ」 そんなサイコ的な言葉を男の子は言い放った。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

38人が本棚に入れています
本棚に追加