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俺は病室のベットの上でふと気付いた。
変な夢を見た。
何だったのだ今の夢は。
不思議な夢だ。
目を覚ました俺は回りを確認する。身の回りの物は一通り揃っている。妻が持ってきてくれたのだろうか。
カーテンは閉められている。その向こう誰かが話している。声からして妻と部下だ。
一体何を話しているのだろうか?
「……しぶとく生きやがったよ」
「本当ね。高い金を出して専門家に依頼したのに殺せなかったってね」
……え?
だれの事を言っているんだ?
「あいつに無駄に金を使ってしまった事に苛立つよ」
イッタイ、ダレノコトヲイッテルンダ?
「なんで死なないんだ?あの社長は」
頭が真っ白になる。
信頼していた部下に、連れ添ってきた妻に殺害されかけたのか?
意味が分からない。
混乱する俺をさらに追い込むように妻が言い放つ。
笑う。嘲笑。たか笑い。
「ふふふ。でも心配はいらないわ。だってあの人両足を失っているんですもの。満足に生活出来る訳ないわ」
何だって?
今、両足が無いって……
何を言ってるんだ?両足ならここに……
俺は瞬間、青ざめた。
確かに、無い。いくら手で触ろうとも、そこには両足が無い。
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ
なんで……なんでこんな事が……
なんでこんな不幸が!
そして俺は思いだした。
夢であったあの二人の子供を。
二人の子供は確かに言った。
生きたいのならどんな事があっても生きるべきだ、と。
そして自分達の事を天使と悪魔だと言った。
どちらが天使で、どちらが悪魔かあの時では分からなかった。
いや、あの時は白い子供が天使だと思い込んでいた。
生き返らせてくれる。俺はその一点だけ見て判断した。
しかし、今ならどちらが天使か悪魔か判断できる。
どうやら……
どうやら俺は悪魔を選んでしまっていたらしい。
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