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契機の発端は些細な親切心と多大な欲なのだろう。
ある日俺は交差点で渡れずに困っている老人を見かけ、声をかけていた。
まるでドラマや小説で画かれる人の良い人間になったような、どこかむずかゆい感じがしたが、俺は老人を助け、少なくとも小さな満足感を感じていた。
不意に、老人がこんな事を言った。
「ありがとう、見ず知らずの青年。実は私は神様なのだ。助けてくれたお礼に君の願いを一つだけ何でも叶えよう。契機は死ぬまでだ」
いきなりこんな事を言われたらすぐに逃げる。
だがその時の俺はどうかしていたらしい。その話にのってしまったのだ。
「本当かい?なら何にしよう……」
金、はあまりにつまらなさ過ぎる。単純に金ではなく、不老不死はどうだろうか?
タイム・イズ・マネーと言う、時は金なり、だ。
「なら不老不死がいいな。それで決まりだ」
「不老不死はいかん」
自称神様の老人は目を見開いて咎める。
「何でだ?何でも叶えると言ったのはそっちだ。神様が約束を破るのか?」
しつこく食い下がった所、神様は渋々了承した。
「君は今から不老不死だ。契機は死ぬまでだからな?」
「ああ、いいとも」
その時、一陣の風が吹き抜けら老人の姿が一瞬にして消え去った。
どうやら本物だったらしい。
それから約束通り俺は歳もとらなくなったし病気すらしなかった。
始めの内はよかったがまわりの知人が死んでいき、数百年、数千年、数万年がたち、地球上には俺以外の生物は絶滅してしまった。
俺は一人だ。永遠に。
死にたい、だが死ねない。
契機は死ぬまで
嗚呼……一体いつになったら……
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