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それからというもの、人形が気になりはじめてしまった。
私の生活が覗かれている気がするのだ。
私の挙動の一つ一つを誰かから観察されているように全身に嫌な視線が纏わり付く。
居間にいる時なんかは特に酷い。
居間にはあの人形があるからだ。
「はぁ……最悪」
勉強をしていた私はシャーペンを投げて伸びをする。
時間はもう深夜。両親はもう寝ている。
少し喉が渇いているが下に行くのは乗り気がしない。
なぜなら、冷蔵庫が置いてあるキッチンに行くには居間を通らないといけないからだ。
「……阿保みたいだわ」
なんて自嘲気味にぼやいて、半ば諦め半分に階段を降りていった。
一瞬、躊躇った後に居間へ入りすぐさま電気をつけた。
普段は人形に目も向けない私だがその日はどうかしていたのだろう。
私は『あろうことか人形を見ようとしてしまった』のだ。
人形はガラスケースに入れられているのだが、そのガラスケースに人形がべったりと張り付いてこっちを見ていた。
「ひっ……」
余りの恐怖に声が出ない。
人形は薄く笑いながらガラスケースを両手で叩いていた。
ガンガン!
ドンドン!
ガンガン!ドンドン!
ガンガンドンドンガンガンドンドンガンガンドンドンガンガンドンドンガンガンドンドンガンガンドンドンガンガンドンドンガンガンドンドンガンガンドンドンガンガンドンドンガンガンドンドンガンガンドンドンガンガンドンドンガンガンドンドンガンガンドンドンガンガンドンドンガンガンドンドンガンガンドンドンガンガンドンドンガンガンドンドン!
そしてこんな事をいうのだ。
遊ぼうよ。
恵美ちゃん遊ぼうよ。
昔みたいに遊ぼうよ。
遊んでよ。
遊べ。
遊べ!遊べ!遊べ!遊べ!遊べ!遊べ!遊べ!
「いやぁーー!!」
私は力の限り喉から叫び声をあげ、そして気を失った。
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