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噂を信じた訳ではないが、確かに噂が流れるだけはあった。
長年、人の手が加えられていないせいか異様ともいえる雰囲気が廃墟全体を包み込んでいた。
正直私はこういうのは苦手なのだ。
「入るぞ」
「えっ!入るんですか!?」
「当たり前だ。なんのためにここに来たんだよ?」
流石は先輩。何の躊躇もなしに廃墟の中へと踏み込んでいく。
私も後に続こうとした瞬間、廃墟の二階から刺すような視線を浴びた。
何かを品定めするような、そんな感じ。
「!?」
しかし二階の窓を見ても当然誰もいない。
「おい!なにしてんだ?」
「すっ、すぐにいきます!」
中に慌てて入った瞬間、軽く後悔した。
中は荒れていて何かが腐ったような異臭が鼻をついてくる。
「こりゃひでぇな……材木でも腐ってんのか?」
「みたいですね……」
「まあいい。お前は二階を調べろ。俺は一階を調べる」
「えっ!?」
さっきの嫌な視線が頭をよぎった。
「何か文句があるのか?」
「い、いえ。二階に行ってきます」
二階へ続く階段。その手前で私は大きく深呼吸をし、決心を固めた。
(よし。行くか!)
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