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先輩が消えた。
私はあの公園のベンチに座って悩んでいた。
絶対におかしい。
こんな事が起こるはずが無い。それに携帯にも出ないのだ。
私は携帯を取り出した。
携帯を握る手には自然と力が篭ってくる。
私はしばらくディスプレイと睨めっこをしていたらしく、気づけば時間は昼過ぎを回っていた。
(どうなってるの?)
「おばさん」
突然聞こえた声。
この感じだと明らかに私に対してかけられた声だと分かる。
顔をあげてみればフランス人形と日本人形を抱いて立っている女の子がいた。
洋と和の人形が妙にミスマッチで少し気味が悪い。
「おばさん、一緒ににんぎょうで遊びましょ?」
「……今私は忙しいのよ、お嬢ちゃん。それと私はおばさんじゃなくてお姉さん」
「じゃあお姉さん、にんぎょう遊びしましょ?」
「いや、だから私は……」
ピピピピピ……
ピピピピピ……
鳴りだした携帯に目を落として確認すると先輩の家から。
もしかして……そんな期待を抱きながら電話に出る。
「もしもし」
「あ、神奈さん?」
でたのは先輩の奥さんからだった。
あらかじめ何かあった時は連絡を頼んでおいたのだ。
「奥さんですか。何かありました?」
「それがね、あの人の部屋を調べてたらノートが出てきたのよ」
「ノート?」
「そう、それに不自然に最後のページだけ使われてて」
「なんて書いてあったんですか?」
「それがね、廃墟、とだけ書かれてたのよ」
「廃墟?」
廃墟って……昨日の廃墟?
やっぱり何かあったのだろうか?
「神奈さんごめんね、たいした事じゃなくて」
「いえ、そんなことありません。それじゃあまた」
私は電話をきった。
「お嬢ちゃん、私は仕事があるから遊ぶのは無理……あれ?」
気づくと女の子はいなくなっていた。
いや、今はそんなことどうでもいい。
廃墟か……
私は昨日の廃墟を思い浮かべていた。
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