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「厳しいレッスンがいけなかったのかもしれないな」
悲観ばかりするマリーニに、女性は持って来た忘れられていた教本を差し出しました。
「彼の心境の変化を私は詳しく知りません。だけど、きっと本気で嫌いにはなっていないと思いますよ」
パラパラと開いたそこには、沢山の書き込みがありました。
ある所には細かく指摘が書かれ、ある所にはリズムが書かれ、ある所には“父さんを思い出せ”と書かれてあり。
女性は少しの間でしたが、しっかりと見ていたのです。
あの時、宿の前でエルメスは、一生懸命この本を見ながら吹いていた姿を。
上手く吹けない自分への歯がゆさで悔しい表情を浮かべていた事を。
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