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小さな真珠の様な物が付いたそれは、何処から見ても発信機には見えない物でした。
女性は軽くつついてみたりしましたが、特に何もないのですぐに止め、今度は同じく渡されたフルートをケースから取り出し組み立てました。
「立派な物ね、それも新品だなんて……お金持ちの国ね」
呟きながらも慣れた様子で構え、小さく息を吸って構えました。
――――――
それはいつかどこかで聞いた音色でした。
美しい旋律に流れる様な音階。
草をつついて歩き回っていた鳩達が、頭を上げて女性を見つめます。
引き込まれそうな美しい音楽はしばらくして終わりました。
見とれていた鳩達もゆっくりとまた草をつつき始めました。
「音が合ってないわね」
微笑みながら女性は誰にでもなく話しました。
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