白に散る赤。

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[さぁ] そう手を差し出してくれた君。 手を取るかは迷った。 だから、僕は君を見上げることしか出来なかった。 [一緒に行こう] 一緒に行こう。 この世界から脱け出そう。 差し出された手に自分の手を重ねる。 脱け出せるものか… そう、心の奥底で思いながら。 ―見えるのは白。または赤。 一体自分はどうしてしまったのだろうか… 身体はだるく、動かない。 [おはよう、雪(セツ)] [セツ…] セツ…刹。 そう、それはお前の名前だ。 俺の名前は… [どうしたの?] [お前…俺の、名前…] 喉に何かつかえているようで上手く喋れない。 喋るごとに息苦しくて、息をするのもやっとだ。 [雪はセツだよ。この世界から色を奪うこの真っ白な雪と一緒の名前。そして僕はそんな世界から色を奪う白に君という色を付け足したんだ] ホラ、キレイでしょ…これが君の色… 両手を掲げる刹。 その手からは鮮やかな赤が滴っていた。 [君の色だよ、何て愛しいんだろう…僕を助けてくれた唯一の、君の色だ。] 段々と刹の声が遠くに聞こえる。 目も霞はじめて、刹の顔がよく見えなかった。 [愛してるよ、雪…これで僕ら、ずっと一緒だ…] 刹の顔が近づき、俺の唇にキスを一つ送る。 その顔は、優しく慈しむかのように微笑んでいた。 [雪…君を殺してしまいたいほど愛していたんだ…] コトンと俺の胸の上に頭を置いて、小鳥がさえずるかのように優しく、か細く刹が鳴く。 ―愛してるよ… その言葉を最後に、俺の意識は深い暗闇へと堕ちていった。    
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