1.お泊まり

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今日はめずらしく残業もなく同僚との付き合いもなく、すんなりと帰れそうだった。 会社のエレベータに乗り込み、俺はさっさと帰りたくて苛立ち混じりに『閉』ボタンを押した。 するとドアが閉まる直前、かけこんきたヤツがいた。 ソイツは慌ただしく、エレベータへと乗り込んだ。 「どうも、先輩!」 エレベータに乗るなり、満面の笑顔で俺に声をかけてきた。 誰かと思えば、総務課の永澤鞠乃(ナガサワマリノ)だった。 永澤はどうやら走ってきたようで、すでに動き出した密室と化したエレベータ内に息遣いが響いている。 「あ、あの先輩、この前はありがとうございました」 永澤は軽く頭を下げた。 「ああ別にいいよ、お礼なんて」 俺は愛想まじりに答えた。 永澤が言う、この前はというのは… とりあえず、わかるように説明すると… 永澤は入社今年2年目の後輩だ。 因みに俺は5年目。 俺は営業だから永澤とは課が違うから、普通だったらそんなに親しくはならないはずだ。 でも永澤が新入社員として、入社してきた年の新入社員歓迎会で運良くというか、運悪く永澤の隣の席になってしまい、それからなぜか懐かれている。
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