目覚め

3/7
前へ
/25ページ
次へ
 闇の中、弱々しく輝く水銀灯が照らしだす光景は、私が想像していたものとは全く異なっていた。  夜中に学校に忍び込み、屋上から身を投げた私に見える光景は、冷たく無機質なアスファルトだと思っていたが、私はそのアスファルトの上に立っていた。  自分では立っている感覚が無いので、実際どのような形でそこに存在しているのかは解らないが、校舎を見る視線の高さは普段見慣れたものだった。  ぼやけた感覚で前に進もうとすると、確かに歩くような感じで進む事が出来た。  すると、水銀灯が闇を切り取る輪郭の端にそれはあった。  赤い水溜まりに埋まる、無様に潰れた肉塊……。  薄灯りに浮かぶそれは、見覚えのある服を着ていた事から、惨めな自分の亡骸だと解った。 (それなら、私を見ている私は何?)
/25ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加