尚美①

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虐待死したその男児は発見された時、頭からスーパーのビニール袋をかぶせられ、もみじのような小さな手を 後ろ手に縛られ、体を『く』の字に曲げていた。 若い母親は、半狂乱だった。お仕置きだった、まさか死ぬなんて、――と。 かぶせられたビニールの中で、大好きな母親に、水が飲みたいと訴えたのだろう。 悪臭を放つ部屋の壁には、クレヨンで描かれた、母親の笑顔が貼られていた。 尚美の精神を崩壊へ導いたのは、この時の事件がきっかけだと、後に判明することになる。
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