尚美①

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中学生になるまで、尚美は、自分は産まれるべきではなかったんだ、と、無意識に心の中に焼き付けていった。 母親の機嫌が良い時は、何を買ってもらうより嬉しかった。 尚美が中学2年の時、母親よりも若い男がアパートに転がり込んできた。 「あんたの父親になってもいいと、言ってくれてんだよ」 母親は、満面の笑顔を浮かべて男を紹介した。 「いいかい、今日からあんたは新藤尚美、と名乗るんだよ。この人の戸籍に入ったんだから」 母親と新藤は、既に入籍済みだった。
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