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「ここへ予約を入れて来たという事は、患者として来たわけね?」
「…分からない」
「分からない?」
淳は、しきりに指を揉んでいる。
「…―自分の事ではないから。…元気そうだね、君は」
「どうかしら。少し疲れているけれど」
良く見れば、淳の目は暗い。口を付けたコーヒーに、吸い込まれそうな弱々しさだ。
「さてと、…御自分の事じゃないというのは?」
「カミさん…尚美の事なんだ」
淳は、視線を早紀に向けない。
「なら、一緒に来て頂いた方が、話が早いんじゃないかしら」
「死んだ。―…2週間前に」
「――ごめんなさい。全然知らなかった」
淳は、深い溜め息をついた。
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