Prologue

2/5
6人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ
五月初頭。 父さんに連れられ、僕はこの町にやってきた。 倉岳町。 海と山に挟まれた自然に恵まれた町。 田舎という程じゃないが、都会とも言えない。 何故、父さんがこんな町に来ようと思ったのかは分からない。 ただ、去年、母さんが死んでから父さんは生きているふりをしているだけに見えた。 それだけ母さんを愛していた。 外では明るく振る舞っていたようだけど、内面はボロボロだった。 それが、2ヶ月前に急に元気になったのだ。 『倉岳町という町に引っ越すぞ』 学校から帰った僕を見るなり、そんなことを言ったのだ。 最初は理解出来なかった。 父さんはポカン、としている僕をパソコンの前に連れて行った。 そこには"奇跡の町"と書かれていた。 体験談を指差し歓喜の声を上げる父さんは、本当に嬉しそうだった。 指差された所には 《もう会えないはずの親友に会えた》 と書かれていた。 それが何を意味するのかは分からなかったが、父さんが嬉しそうだったから、とりあえず一緒に喜んだ。 僕はニ年間通った学校に別れを告げ、【倉岳学園】に転校することになった。 父さんも前の会社を辞め、新しい会社で働き始めた。 クラスで変な目で見られるかもしれないけど、僕は気にしなかった。 父さんが元気になったのが嬉しかったのだ。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!