第三章「開幕戦・鮮烈デビュー?」

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試合終了後、報道陣が湊のインタビューを聞くべく殺到したが、インタビューは実現しなかった。 試合終了と同時に、念入りなケアを行う為にベンチ奥へ引き返してしまったからだ。 「しかし監督。あれはやりすぎじゃないですか? 僅か9球の全力投球で、あれだけ念入りなマッサージをするのは」 「和田ちゃん、湊があのジャイロボールを投げる為に発生させる運動エネルギーってどの位か知ってる?」 「は?」 「あの小さな骨格で何km/h相当の球を投げる力を発揮して、投げているか分かる?」 「140km/h位ですか?」 湊の165cmという体格から考えれば妥当な、充分な数字だろう。 「トレーナーとか、専門家に聞いてみたら、160km/h相当だってよ」 「160km/h! そんな馬鹿な!」 「本当だよ。その位の力を発揮して投げているから、ど真ん中で120km/hちょっとの球で勝負出来るんだよ。普通なら、身体が耐えきれない力を受け止めているんだ。あの位のマッサージは当然さ」 「しかし」 「言いたいことは分かるよ。大丈夫、念のためのケアだから。連投も出来るよ。ただし、一試合20球を超えなければ。それよりも、今は新城だろ?」 「あ、はい」 「やっとプロとアマチュアの違いが理解出来たみたいだけど、明日以降もどんどん使って行くんだから」 「使って行くつもりですか」 「あいつの問題は練習でどうにかできる代物じゃないよ。試合で、自分で克服しなきゃ。それが出来れば、先発で使うよ」
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