第三章「開幕戦・鮮烈デビュー?」

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チームスポーツにおいて、目に見えないのに一番大切なもの。 それは主導権、流れだ。 三回までで5点を奪われ、無死満塁のピンチにまで追い込まれ、試合の主導権は相手側にあった。 しかし、この絶好のチャンスに得点を奪えなかった。 このピンチを潜り抜けたことで、フェニックスに勢いが生まれた。 フェニックスは元々打撃力に秀でたチームだ。勢いを得たことで、打線が繋がる。 ピンチの後にチャンス在り。 格言通りにフェニックスはピンチを潜り抜けたことで、チャンスを得た。 七回を終えて7対5。逆転に成功する。 八回のマウンドも引き続き、新城が上がる。 「監督、新城は」 「分かってるよ。昨日も投げて、今日はロングリリーフだ。しかも、三回の無死満塁を抑えた時から、気合いで乗りきってる」 「じゃあ、何故このイニングも?」 「死んでないからだ」 「え?」 「球速、球威、キレ、コントロールも徐々に落ちて来ている。だが、あいつの目は死んでいない。大丈夫、林原と湊はブルペンで準備完了だよ」 いい加減に見えて抜かりの無いのが、井原の唯一尊敬出来る点だ。 「プロの世界って、気合いや精神論で何とかなる甘い世界じゃない。でも、その精神論が必要な場合がある。それを、あいつに体験させたくてな」 「監督・・・」 八回のマウンドに上がった新城は、目に見えて疲労していた。 粗めの呼吸と滝のような汗。 ストライクが中々入らない。 元々球速が速いので、辛うじて誤魔化せているが、それもそろそろ限界だろう。 (せめて、後一人!) 1ストライク3ボール。 五球目。 「あっ!」 スライダーが甘く入った。 甘く入ったスライダーは、痛打されると長打必至だ。 そうなる位なら、ど真ん中にストレートを投げた方が何倍も良い。 鋭い当たりが新城の頭を越えてセンター前へ――  
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