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チームスポーツにおいて、目に見えないのに一番大切なもの。
それは主導権、流れだ。
三回までで5点を奪われ、無死満塁のピンチにまで追い込まれ、試合の主導権は相手側にあった。
しかし、この絶好のチャンスに得点を奪えなかった。
このピンチを潜り抜けたことで、フェニックスに勢いが生まれた。
フェニックスは元々打撃力に秀でたチームだ。勢いを得たことで、打線が繋がる。
ピンチの後にチャンス在り。
格言通りにフェニックスはピンチを潜り抜けたことで、チャンスを得た。
七回を終えて7対5。逆転に成功する。
八回のマウンドも引き続き、新城が上がる。
「監督、新城は」
「分かってるよ。昨日も投げて、今日はロングリリーフだ。しかも、三回の無死満塁を抑えた時から、気合いで乗りきってる」
「じゃあ、何故このイニングも?」
「死んでないからだ」
「え?」
「球速、球威、キレ、コントロールも徐々に落ちて来ている。だが、あいつの目は死んでいない。大丈夫、林原と湊はブルペンで準備完了だよ」
いい加減に見えて抜かりの無いのが、井原の唯一尊敬出来る点だ。
「プロの世界って、気合いや精神論で何とかなる甘い世界じゃない。でも、その精神論が必要な場合がある。それを、あいつに体験させたくてな」
「監督・・・」
八回のマウンドに上がった新城は、目に見えて疲労していた。
粗めの呼吸と滝のような汗。
ストライクが中々入らない。
元々球速が速いので、辛うじて誤魔化せているが、それもそろそろ限界だろう。
(せめて、後一人!)
1ストライク3ボール。
五球目。
「あっ!」
スライダーが甘く入った。
甘く入ったスライダーは、痛打されると長打必至だ。
そうなる位なら、ど真ん中にストレートを投げた方が何倍も良い。
鋭い当たりが新城の頭を越えてセンター前へ――
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