第四章「始まりの出会い」

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「本当ですか?」 桜甲高校野球部監督である荒川は、その突然の訪問者の話に驚きを隠せない。 「本当です。湊一成くんを、東北フェニックスはドラフトで指名させていただきます」 その訪問者、来シーズンからフェニックスを指揮する井原保は、淡々と信じられないことを言う。 「しかし、うちは甲子園出場すらしていませんよ?」 「プロ入りするのに甲子園出場は関係ありません。プロ志望届を提出すれば、問題ありません」 「しかし、あの体格ですよ?」 「野球は体格を競うスポーツではありません」 信じられなかった。 「あの、湊のどこを評価されたのですか? 私には、理解出来ないのですが」 すると、井原は鞄からファイルを取り出した。 「これが理由です」 中は湊の詳細なデータであった。 運動能力、柔軟性、投げた試合の詳細なスコアブックや難解な数式。運動力学や、流体力学の数式でびっしりと埋め尽くされている。 そして、そこには参考データとして、プロ選手の平均値があり、比較されていた。 圧倒的に下回っていた。 だが、ファイルの後半に湊の投球フォームの連続写真があり、見慣れない単語に関するレポートが続いていた。 『螺旋回転速球の実現』 その項目内の湊の数字は、プロの平均値を大幅に上回っていた。
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