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「今は？」
「プロの世界には、当然ですが、トレーナーもプロが揃っています。時間は人の倍以上かかるかも知れません。しかし、彼にはそれだけの価値がある」
「本人に、その話は？」
「まだしていません。最初に、一番間近で見てきた荒川さんの意見が聞きたいと思いまして。彼の才能に、薄々気付いていたのでしょう？ そうでなければ、彼を一年生から大事な場面でワンポイントリリーフで使う納得のいく理由にはなりませんからね」
「・・・お気付きでしたか。流石はプロです」
荒川は気付いていた。
湊の不思議な力を。
球速は遅い。
変化球はチェンジアップのみ。
しかし、打たれない。
それ以前に捕手が捕れない。
まともに捕れたのは卒業していった大庭だけだった。
その大庭は大学に進学し、二年生ながら正捕手で本塁打をかっ飛ばしている。
「湊は、不思議な奴です。生真面目だけどマイペースで、何を考えているのか、掴みきれませんでした」
苦笑いを浮かべる。
「ご案内します。あいつなら、きっと図書室ですよ。受験生ですから」
「湊くんは、成績も良いのですか？」
「野球部では一番、学年でも上から２０番以内ですよ。そうは見えませんけど」
「確かに、見た限りでは、高校受験ですからね」
湊の幼顔を思い浮かべながら、二人は盛大に笑った。
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