第四章「始まりの出会い」

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桜甲高校図書室。 県内有数の進学校ということもあり、夏休み前の7月ともなれば、引退した運動部の生徒の多くが自主勉強に訪れていた。 その中には湊一成もいた。 「ねぇ、この方程式って、どう解くの?」 元野球部マネージャーにして、幼なじみの青木佳奈は湊に話しかける。 スラリと背が高く、可愛いと言うよりも、カッコいいと言う表現が似合う。 「ん? あぁ、それは前の問題と同じ公式を使うんだよ。・・・こうやって」 「あ、なるほど」 あっさりと解いてしまう。 「今の時期にこの問題解けないと辛いんじゃないの?」 「う・・・。言わないで」 ガックリとうなだれる。164cmの湊に対して167cmと女性では長身だ。 「でも、いっくん、まだ受験校決めていないんでしょ? 大丈夫なの?」 「ん~、やりたいことって、今は野球だけなんだよね」 「でも、将来野球で生活するには、選手か関係スタッフ位でしょ?」 「だよね。他にも指導者とかもあるけど、僕は指導者向きじゃないしね。そう言う佳奈ちゃんは福祉系だっけ?」 「うん。いっくんも早く進路決めないと。いっくんなら、どこでも行けるよ」 「そうだね。頑張って見つけるよ」 その時だった。 湊の運命を決める分岐点となる人物が現れたのは。
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