第四章「始まりの出会い」

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「プロの世界ですか?」 唐突な質問。 「湊くん。実は君に我が東北フェニックスに来てほしいと考えている」 「え!?」 驚きの声は佳奈だ。 当の本人は不思議そうな顔で、 「バッティング投手ですか? それとも、球団職員ですか?」 「・・・」 盛大に勘違いしていた。 「いっくん、井原さんは、いっくんをスカウトしに来たのよ」 「だから、バッティング投手? 球団職員?」 「俺の言い方が悪かった。湊一成くん。君をドラフトで指名しようと考えている」 「で、でも、どうしていっくんを・・・。甲子園にも行ってないし、凄い変化球を投げる訳でもないのに」 「理由は、これさ」 井原は湊にファイルを渡す。荒川に見せた『ジャイロボール』に関するファイルだ。 目を通し、最終項目までを流して読む。 「何? これ?」 隣で覗き込んだ佳奈の頭上には、ハテナが複数浮かんでいた。 「だから僕の速球をみんな空振りしてたんだ。そして5、6球で身体が痛くなっちゃうのも」 湊には理解できたらしい。 「でも、ここにある数値まで鍛えるのって、かなり長期間、専門的トレーニングを受けないとダメですよね?」 「その通り。短くても、2年以上はシーズンオフに関係無く専門的トレーニングを受けてもらうことになる」 「その間、試合にも出れませんけど、大丈夫なんですか?」 「俺の監督契約は3年。その全てを賭けて、君の可能性を発揮させたい。どうする?」 沈黙。 そして、湊が口を開いた。 「多分、無理ですよ」
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