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「無理、か」
「はい。僕のことを高く評価して頂いたことは、感謝します。でも、大学に進学して、そこでもっと基礎を固めてからの方が良いと思います」
湊の足りない部分。それはプロ選手としての身体だ。
ならば、身体を作ってからプロに挑戦すればいい。
まともな考え方だ。
「確かにそれが正解だな」
井原は呟くように言う。
「君が、普通の選手ならそれが大正解だ」
「普通の、選手?」
井原の意味深な台詞に佳奈が呟く。
「今日は突然すまなかったね。また、来週にでも来るよ。今度はご自宅にね」
「そんなすぐに、考えは変わりませんよ」
湊がはっきり言う。
「分かっているさ。だが、こっちもプロだ。簡単に引き下がれないのさ」
そう言って背を向ける。
「もう一度、言っておくよ。湊一成くん、君には他人には無い、君だけの才能がある。しかし、それをフルに発揮するためには、それ専門のトレーニングが必要だ」
ゆっくりと振り返り、
「決断は今しかない。4年後の君では、100%プロで通用しなくなっているだろう」
「え?」
「詳しい話は次に。少しばかり、長い話になるからね」
そう言い残し、井原は去っていった。
湊一成との、最初の直接交渉は決裂に終わる。
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