第四章「始まりの出会い」

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来期から監督に就任する井原だが、その条件として、一人の高校生をドラフト2位で指名することと、フロントに要求していた。 それが、湊一成。 しかし、スカウトが調べれば調べるほど、プロレベルではないことが証明された。 しかし、井原は湊にこだわった。 これまでのプロ野球の長い歴史で、多くの選手が活躍してきた。 そして、その影で通用せずに引退していった選手のなんと多いことか。 アマチュア時代に、野手ならば打率、本塁打、盗塁、守備力を評価。投手ならば、勝ち星、防御率、奪三振数、球速が評価され、プロがスカウトする。 しかし、即戦力と言われたが、そこから成長出来ない選手が殆んど。プロ入りしてから見違えるように急成長する選手など、1年に何人現れるだろう。 10年に一人の逸材、アマチュアNo.1と評価されながらもプロで通用しない選手も数多くいる。 その理由は、人は目に見える値を絶対の評価としているからだ。 球速、変化量。数字があっても、それらが素直で打ち頃ならば無意味。 本塁打数。苦手コースと球種があれば、参考以前の問題だ。 可能性と成長率。 井原は、それに優れた新時代の選手が欲しかった。 個人的な好み以上に、これからの、日本の野球発展のために。 自らが、プロ入りしてから、捕手から投手にコンバートし、成功した、稀有の経歴を持っているからこそ、分かるのかもしれない。 ともかくとして、湊一成。 彼は、井原が見てきた選手の中で、最も可能性と成長率に優れている。
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