第四章「始まりの出会い」

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井原訪問から1週間が過ぎていた。 「井原さん、来ないね」 「そうだね」 放課後の図書室。 佳奈と湊は受験勉強に勤しんでいた。 しかし、勉強に集中しているかと言えば、そうではない。 特に佳奈は、井原のことが気になっていた。 「佳奈ちゃん、集中して勉強しないと駄目だよ」 「だって、気になるんだもん」 即答する。 「僕だって気になるけど、佳奈ちゃんが気にすることかな? 僕の問題だし」 当事者以上に第三者が気にしている。 「・・・ねぇ、佳奈ちゃん」 「何?」 「プロ野球選手の仕事って、ただ野球が上手くなって、試合に勝つことかな?」 「え? えっと、そうじゃないの?」 珍しく湊は真剣な表情だ。 「なんかさ、それだけじゃないような気がするんだよね」 「そうかな? 試合に出て勝つこと以外に、プロに仕事ってあるかな?」 「僕ってさ、勝ち負けにこだわらないでしょ? だから、試合に勝つことが仕事なら、プロには絶対に向いていないと思ってさ」 「そう言われたら、そうかもね。いっくんは、頑張り屋だけど、結果は気にしないから」 納得できるような、できないような。 この時、湊は複雑な気持ちを抱えていた。 そして、そんな気持ちを知ってか知らずか、その晩に井原が湊家にやってきた。
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