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井原は両親への簡単な挨拶を済ませると、湊と二人だけで話を始めた。
「どうやら、ご両親は君の進路については、君の意思に任せているみたいだね」
「はい。好きなようにしろと常々言われています」
良く言えば意思を尊重している。
悪く言えば放任主義。
「あの、井原さん。一つだけ質問させてもらって良いですか?」
「ん? どうぞ」
「プロ野球選手の仕事って、野球を上手くなって、試合して勝つことだけですか?」
初めて見る湊の真剣な表情。
「・・・勝つことが全てってチームもあるさ。勝ってなんぼの世界だからな」
「そう、ですか」
「だけど、俺はそれだけじゃ無いと思っている。プロ選手、プロ野球には、勝つこと以外に大切な仕事がある。今日は、それを君に知ってもらおうと思って来たんだ」
そう言うと、鞄から一つのファイルを取り出した。
所々汚れていた。
「これは?」
「プロ野球選手の大切な仕事さ」
湊は恐る恐るファイルを開く。
中には、
「手紙、ですか?」
「ああ。俺が現役時代の、とあるファンからのね。・・・もう、この世にはいない人だよ」
「え?」
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