第四章「始まりの出会い」

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井原は両親への簡単な挨拶を済ませると、湊と二人だけで話を始めた。 「どうやら、ご両親は君の進路については、君の意思に任せているみたいだね」 「はい。好きなようにしろと常々言われています」 良く言えば意思を尊重している。 悪く言えば放任主義。 「あの、井原さん。一つだけ質問させてもらって良いですか?」 「ん? どうぞ」 「プロ野球選手の仕事って、野球を上手くなって、試合して勝つことだけですか?」 初めて見る湊の真剣な表情。 「・・・勝つことが全てってチームもあるさ。勝ってなんぼの世界だからな」 「そう、ですか」 「だけど、俺はそれだけじゃ無いと思っている。プロ選手、プロ野球には、勝つこと以外に大切な仕事がある。今日は、それを君に知ってもらおうと思って来たんだ」 そう言うと、鞄から一つのファイルを取り出した。 所々汚れていた。 「これは?」 「プロ野球選手の大切な仕事さ」 湊は恐る恐るファイルを開く。 中には、 「手紙、ですか?」 「ああ。俺が現役時代の、とあるファンからのね。・・・もう、この世にはいない人だよ」 「え?」
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