第四章「始まりの出会い」

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桜子の死因は単純だった。 手術そのものは成功だった。しかし、桜子の体力がもたなかった。 元々手術そのものが、賭けだった。 このまま静かに死を待つか、危険な選択肢を選び、少しでも延命するか。 桜子は後者を選んだ。井原が挑戦したように。 桜子の両親からお礼を言われた。「桜子は貴方から生きる力を貰いました」と。 そして、桜子の遺した日記の最後に、 『おめでとう、大人の私。ウイニングボールをありがとう、井原さん』 「泣いたよ」 井原は淡々と言う。 「彼女が死んだ事よりも、何も出来なかった自分の不甲斐なさに」 ファイルの最後には桜子の日記があった。 「それから考えたんだ。プロ野球選手のやらなきゃいけない事ってやつを」 「・・・」 「そして、気付いた。応援してくれるファンに勇気を与え、野球を通じて大切な事を伝えていく。それが野球選手の本当の仕事だ。成績なんて、オマケに過ぎない。俺は、そう考えるよ」 井原は桜子が死んだ翌年、投手四冠を達成した。 「湊一成。君がプロ野球選手となることで、それまでプロ野球選手を志すことすら出来なかった人々に勇気を与える。そして、新しい野球の、最初の一歩になる」 湊は黙って聴いていた。 そして、ゆっくりと口を開く。
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