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批判の的から一躍スター扱い。
マスコミの、都合の良い態度に呆れながらも、湊は故障もなく順調だ。
振っても当たらない不思議な球を投げる湊。
当初、違反投球をしているのでは、と的外れな疑いもかけられたが、疑いは一瞬で否定された。
対戦した打者が口を揃えて「そんな事はない。真剣勝負に余計な詮索をするな」とメディア、自称評論家の不正・八百長疑惑を痛烈に批判した。
湊の球は魔球と称され、注目を集めていた。
そんなある日、湊に連絡してきた人物がいた。
「いっくん、久しぶり。どう? 頑張ってる?」
「うん、頑張ってるよ。佳奈ちゃんこそ、ちゃんと大学行ってるの?」
「勿論よ。夏になったら、実習が入るわ」
背の高い女性、幼なじみにして同級生の佳奈は楽しげに言う。
そして、軽めの夕食の後、バーに行く。
「でも、本当にいっくんが活躍する日が来るなんて驚き。ずっと期待していたけど、いきなりなんだもん」
「僕も驚いているよ。物凄い応援で、マウンドに上がるのが毎試合楽しみだよ」
変わっていない。
高校を卒業し、お互い違う道を歩んだが、湊は変わっていない。
「でも、突然だね。佳奈ちゃんから連絡くれるなんて」
湊の何気ない一言に一瞬固まる。
「・・・実は、どうしても教えて置かないといけない事があるの」
急に真剣な口調になる。
「何?」
湊は呑気なまま。
「あの子が、帰ってくるらしいの」
「あの子?」
「忘れちゃったの? 一つ年下で、中学卒業してすぐに転校しちゃった――」
「まさか、郁乃ちゃん? 御堂郁乃ちゃん?」
「そうよ・・・」
湊も黙ってしまう。
御堂郁乃。
世界規模で事業を展開している御堂グループのお嬢様。
その我の強さと行動力から、御堂の女王と言われた幼なじみだ。
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