第五章「不死鳥リレー・春の巻」

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翌日の試合は日曜日のデイゲームということもあって、満員御礼。 「完全アウェイだな」 満員の観客を見回して新城が呟く。 4万人は詰めかけているファンの、9割以上が北海道ナイツのファンだ。 今なら分かる。 対戦国で試合をするサッカー日本代表の気持ちが。 だが、こんな状況でもマイペースでプレイ出来る選手がいる。 若き守護神、湊一成が。 「あれ? 湊は?」 いつもなら、ベンチ近くでウォーミングアップをしているはずの湊がいない。 「大庭、湊は?」 「ああ、あそこだ」 指差した方角には、落ち着きなくキョロキョロしている、ちびっこがいた。 湊だ。 誰かを探しているように見える。 「何やってんだ? あいつ」 「さぁ。珍しい光景ではあるが」 試合が開始される。 まずは、恒例の始球式だ。 マウンドに上がったのは北海道ナイツのユニフォーム姿の少女だった。 地元の高校生だろうか。 「ま、まさか・・・」 湊の顔が強張る。 場内アナウンスで始球式の投手が紹介される。 『本日より北海道ナイツGMに就任されます、御堂郁乃GMが始球式を行います』 猛禽類を思わせる鋭い視線と風格を持った少女。 背は低めだが、それを感じさせない威圧感があった。 成長した幼なじみは、湊にとって嫌な方向に成長していた。
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