第五章「不死鳥リレー・春の巻」

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「GMって、まだガキじゃないかよ。なぁ、湊」 新城が呆れた様子で言う。 「僕の、幼なじみです。一つ年下ですが、アメリカで、高校と大学を飛び級で卒業してます」 絞り出すように呟く。 悲壮感すら漂わせて。 と、球場スタッフが足早にやってくる。 「湊選手、始球式のバッターをお願いします」 「え?」 一瞬、何を言われたか理解出来なかった。 「御堂GMのご希望で、始球式は湊選手と、真剣勝負でお願いしたいとの事です」 成る程。 分かったよ。 僕には、逃げ道は残されていないんだね。 湊は悟った。 そして、全力で駆けた。 郁乃が待っている。 幼い頃に、身体の隅々に染み付いたトラウマが、郁乃を待たせては、機嫌を損ねてはいけないと激しく警鐘を鳴らしている。 肩で息をしながらも、湊は左バッターボックスに入っていた。 その速度は、普段のマイペースぶりからは想像出来ないほど速く、早い。 「少し待ちましたわ」 「ゴメンね、いきなりで焦っちゃったよ」 「まぁ、良いです。いきなり無茶な要求をしたのはこちらですから」 そう言うと、ロージンで滑り止めをし、鋭い目付きを更に鋭くして湊を睨む。 「真剣勝負、行きます」 本気だ。 こうなったらこっちも全力でするしかない。 手を抜こうものなら、どんな目に合うか。 そして、郁乃は大きく振りかぶった。
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