第五章「不死鳥リレー・春の巻」

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始球式という名の郁乃の憂さ晴らしが終わり、試合は開始された。 北海道ナイツは、先発投手が揃ったチームだ。 しかし、守護神が確立できず、終盤に弱い。 逆転負けが多く、打撃力も、長打は少ないがしっかりと繋いでくる。 攻撃よりも守備に優れたチーム。それが北海道ナイツだ。 序盤、大方の予想通り投手戦となり、お互い、ヒットを打つことすら困難な白熱の試合。 四回に試合が動く。 大道寺のセンター前ヒットをきっかけに、この回に3点を上げる。 裏に2点を返されるも、次の回にも2点追加する。 試合開始時は完全に投手戦であったが、流れを掴んだ瞬間、乱打戦へと変貌した。 両チーム共にベンチやブルペンが慌ただしくなるが、フェニックスベンチには焦りはない。 続く投手に対する安心感があるからだ。 結局、七回に新城、八回に林原、九回に湊のリレーで8対5の乱打戦を制した。 始球式で湊がペースを乱していないかと心配されたが、見事に切り替えていた。 試合に勝った湊だが、ロッカールームでの表情は冴えない。 何せ、これからナイツの新GMとの食事の約束があるのだ。 本当に、冴えない。 「はぁ~・・・」 溜め息が、それを表していた。
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