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始球式という名の郁乃の憂さ晴らしが終わり、試合は開始された。
北海道ナイツは、先発投手が揃ったチームだ。
しかし、守護神が確立できず、終盤に弱い。
逆転負けが多く、打撃力も、長打は少ないがしっかりと繋いでくる。
攻撃よりも守備に優れたチーム。それが北海道ナイツだ。
序盤、大方の予想通り投手戦となり、お互い、ヒットを打つことすら困難な白熱の試合。
四回に試合が動く。
大道寺のセンター前ヒットをきっかけに、この回に3点を上げる。
裏に2点を返されるも、次の回にも2点追加する。
試合開始時は完全に投手戦であったが、流れを掴んだ瞬間、乱打戦へと変貌した。
両チーム共にベンチやブルペンが慌ただしくなるが、フェニックスベンチには焦りはない。
続く投手に対する安心感があるからだ。
結局、七回に新城、八回に林原、九回に湊のリレーで8対5の乱打戦を制した。
始球式で湊がペースを乱していないかと心配されたが、見事に切り替えていた。
試合に勝った湊だが、ロッカールームでの表情は冴えない。
何せ、これからナイツの新GMとの食事の約束があるのだ。
本当に、冴えない。
「はぁ~・・・」
溜め息が、それを表していた。
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