第五章「不死鳥リレー・春の巻」

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試合後、出口に停められていた高級外車に乗せられ、湊は食事の場へと連れられる。 そして連れて行かれた場所は、 「・・・はい?」 全長100メートルを楽々越える高層ビルの最上階。 指定されたのはここだった。 そして、自分の服装をチラリと見る。 球団から支給されたスーツではなく、自前で購入した一着20万はするスーツ。 しかし、着ている本人が中学生並なので、高校の制服に見える。 「よし、行こうか」 専用エレベーターで最上階に向かう。 そして、早速気後れしてしまう。 広いフロアに数件の店があると庶民的感覚でいたが、まさか、フロア全てが一つの店だったとは・・・。 しかも、値段が庶民の10倍はする超高級レストランだ。 (そして、郁乃ちゃんはどこに) キョロキョロと辺りを見回すがそれらしい人は見えない。 と、 「いらっしゃいませ。湊一成様」 「え?」 「こちらにどうぞ、御堂様がお待ちです」 何故自分のことを知っているのだろう。 そんな疑問を抱きつつ、ボーイについていく。 案内されたのは奥の個室――という名の広い空間。余裕で20人はここで食事が出来るだろう。 「お待ちしてました。一成さん」 「ゴメンね、試合後に報道陣に囲まれちゃって」 「それはそうですね。無傷の連続9セーブ達成ですしね」 「う・・・」 それは遠回しに「自分のチームを倒して」という皮肉が込められていた。 「まぁ、それは良いわ。戦力不足は承知してますから」 自嘲気味に言う。 「本題に入っても構いません?」 「え、大丈夫だよ」 一拍の間をおいて、郁乃は口を開いた。 「私の球、プロで通用すると思いますか」 真剣な眼差しで郁乃が言う。
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