1043人が本棚に入れています
本棚に追加
ライブは山奥にある、小さなロッジで開催されました。
薄暗い会場にはアジアンな衣装に身を包んだ男女でにぎわっていました。
巻き髪にカットソー、ひらひらスカートの私だけ、一人浮いていました。
もちろん彼氏もバリバリのアジアン服を着ています。
そのライブではアボリジニの伝統楽器ディジュリドゥが演奏されました。
長い筒のような楽器に息を吹き込み、奏でます。
白蟻に中身を喰われ、空洞と化したユーカリの木を伐採して、ペイントした、至ってシンプルな楽器です。
ドレミ音階もなく、ブオブオ吹くだけなのですが、プレーヤーによって、そのただのブオブオが妙音に聴こえるから不思議です。
音楽療法に使われる、癒しの楽器としても知られています。
癒しの楽器のせいか、ライブが始まると、膝を抱えて聞き入る者、ヨガのポーズをとるもの、踊り出す者、皆さん反応がそれぞれでした。
癒しの楽器なので、歯茎を剥き出したままいれば、歯周病菌が少しは死ぬかもと、思いましたが、さすがに歯茎剥き出し状態で聴くのはやめにしました。
さて、ライブが佳境にはいるにつれ、何故か歯茎がムズムズします。
歯周病菌が踊っているのでしょうか。
ライブが終わり、ロッジのアジアン料理を食べると私はすぐに洗面所で歯を磨き始めました。
食後すぐに歯磨きしないと歯垢の中の歯周病菌が爆発的に増えるような気がして、私は食後の歯磨きを徹底していました。
歯ブラシが真っ赤に染まりました。
衝撃。
下の歯の間から一斉にに血が糸を引いて流れていました。
まさに白糸の滝。
歯と歯の間を赤く細い滝が流れていきます。
口をゆすぎます。
ロッジの洗面所で、歯茎の血を洗い流す私はまだ28歳。
洗面所を出れば、ライブの熱気に包まれた人々と彼氏がいます。
誰が気付いてくれるでしょう。
私の口中の熱気を。
歯周病菌は私の口の中で、激しくエキサイトしていました。
最初のコメントを投稿しよう!