憧れの東京

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 東京では、秋は感じるものではなくテレビや雑誌から知らされるものだと識った。  村にいた頃、景色に色を付けるのは自然であったが、ここでは人が景色に不自然な色を付ける…。 「唯、これで合ってる?」 「んーちょい右。あー行きすぎ」  唯が元気を取り戻し、今二人でお店の入り口の装飾をビニールの紅葉で飾っていたところだ。ただ元気になったといっても、まだまだ安心はできない。 「心配性なんだから。でも健ちゃんのそういうとこ好きよ」  そんなことをいわれれば余計気になってしまう。だから今は、無理をさせない程度に仕事を手伝わさせてもらっている。 「なぁ唯、明日渋谷いかないか?」  こっちにきてまだ東京見物をしていなかった。渋谷は前からどーしても行ってみたかった場所の一つだ。向こうにいるとき、唯が学校に持ってきていたファッション雑誌の中の、同い年の男女が身につける服や靴、アクセサリーは、オレ等の憧れであった。 「渋谷に行ったらあの店であれを買おう!これを買おう!」 などとよく話していたのだった。 「行く!行く!」  唯は子供のようにはしゃいだ。  やっと生活にゆとりを持てるようになってきた。これからいっぱい楽しもう。一生懸命働いて、いっぱい楽しもう!…  昨日より今日より、ちょっとだけ明日を見ることに視線を傾けることができた瞬間であった。
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