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十月も終わりにさしかかった頃、ニヤは時雨の中を一人歩いていた。
玲のマンションへと続く、緩やかな坂道。
学校からの帰り、おろしたての黄色い傘を広げニヤは一歩一歩その坂道を進んでいく。
冬の始まりを告げるような雨は冷たくて。
霧のようだった。
玲は地方の仕事があるらしく数日前から家をあけており、相変わらずの留守番の日々にニヤはウンザリしていた。
あの日、自分の気持ちを吐露した日からもう何日もたっていたが二人の関係はまったくといって良いほど進展しておらず、寝る前に額や頬にキスしてくれる以外は玲の態度は以前と変わらないものだった。
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