9 十三夜月

3/30

1404人が本棚に入れています
本棚に追加
/217ページ
「くそ、ガキ扱いしやがって」 冷静になって考えると、玲のあの時の言葉だって本心なのかどうか疑わしくなってくる。 玲はモテる、それも尋常ではない程に。 モデルや俳優並みに整った、ともすれば女性に見えるような顔立ち。 世間では天才画家やら印象派の新星などと呼ばれ、物腰はどこまでも穏やかで品行方正。 嫌みなほどに完璧にも関わらず、本人は果てしなく無自覚で。 森川などに言わせれば、そこがまた母性本能をくすぐるらしい。 そんな玲がガサツで口の悪い、やせっぽちで色気の欠片もない自分などを好きになったりするのだろうか? 答えなど誰に聞くまでもなく分かりきっていて……。 自分で考えながら泣きそうになってくる。
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1404人が本棚に入れています
本棚に追加