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人だかりの出来るその絵の前に来て、ニヤは目を見開いた。
「rei お前の好きな画家だろ?」
鮮やかな色彩、人目を惹きつける斬新な構図。 圧倒的なまでの存在感。絵の下の方に癖のある字で「rei.」とサインがうたれているそれは間違いなく、ニヤの良くしる玲の絵だった。
他の絵を見てきたあとだからこそ良く分かる、玲はやはり天才なのだと。
多くの人が食い入るようにその絵を見ていた。
そして、ニヤもその例外ではなかった。
玲の絵はとても綺麗で儚い、悲しげで、けれど何故か胸の辺りが温かくなる。
「岩城もこいつの絵好きなの?」
ニヤが尋ねると岩城はなんだか照れた様子で頬をかく。
「好きっつーか。 神山がこの人の画集みてたろ? だから、俺もそれ買ったんだけどさ。 好きとか嫌いっていうより何か……すげー、と思った」
岩城の言葉にニヤは彼に視線を送る。
そして、ニッコリと笑った。
「神山?」
ニヤに岩城が驚いたように声をかけて。
「やっぱ玲はすげーよな、ニヤは大好きだよ」
心底嬉しそうに再び絵を見つめるニヤに岩城はしばらく見とれていた。
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