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「で、結局お母様は?」
「来ませんでしたよ、母は父を嫌っていましたから」
共に聞こえたのは玲の声だったが、その声はいつもより低く、少しだけ掠れて聞こえた。
玲を脅かそうと身構えていた体が嘘みたいに固まっていた。
玲のその酷く傷付いた声に。
「親戚の方は随分と母のことを言っていました、旦那の葬儀にも来ない軽薄な女、と……おかしな話ですね、原因は僕にあるのに」
「玲君……貴方、まだそのこと。 玲君が罪悪感を感じることじゃないのよ? ニヤちゃんのことだって……」
「分かっています。 僕は両親を捨てた、そして両親に捨てられたニヤを拾った、それで僕の罪がいくらかでも消える、そんな気がして」
唐突に出された自分の名、それに驚く間もなく玲が答える。
どこか苦味を帯びた玲の言葉は尚も続いて。
「ニヤをあんな形で引き取ったのは間違いだったと、今では思っています」
放たれた言葉に目の前が真っ暗になった。
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