11 猫との決別

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おまけにブレスレットを一緒に買いに行ったことも知っていて。 不安に揺れるニヤのその瞳に、僕は渡すときに言わなかったことをとても後悔した。 今更、思い悩んだ所でニヤを傷つけたことには変わりなく、僕は内心で舌打ちしながら「着替えてくる」と伝え部屋を後にした。 線香の香りのする服にニヤが気がつくのが嫌だったし、何よりも父のことをこれ以上思い出したくなかった僕は、スーツを脱ぎ捨て、いつもの服に身を包む。 僕が着替えてリビングに戻り矢野さんから忘れていたというストラップを受け取るとニヤが渋い顔をして「宿題をする」と部屋を出て行った。
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