2 母親の才能

6/13
前へ
/217ページ
次へ
僕の留守中、ニヤの世話は僕の絵をおいてくれている画廊を管理する森川という女性にお願いしていた。 何かあったときにはすぐに僕に連絡がくるようになっており短時間で戻れる場所となると結局いつも似通った近場に限られるのだ。 淀みだした空を眺め、峠の休憩所にあるベンチに腰掛けた僕は画用紙に灰色を塗っていく。 余計な手は加えない、写真のようにありのままをただ画用紙に移していくのだ。 『あなたこの子いらない?』 整った少し高い声。 僕はまたあの日のことに思いを馳せていた。
/217ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1404人が本棚に入れています
本棚に追加