1 野良猫

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十八の誕生日だった僕が両親を捨てたのは。 蒸し暑い八月の夕刻。 普段、家に居ることのない両親を半ば脅すように家に引き留め、学校を辞める旨と家を出ることを伝えた。 少しも期待していなかったといえば嘘になってしまう、僕の決別宣言によって懐かしい嘗ての家族を取り戻せればという思いは確かにあったが、それ以上の諦めと、焦燥感が胸の内を支配していた。 予想通り罵り合いを始めた父と母に当時持っていた作品全てを渡し、僕は家を出た。 壊れていたのは家族や両親だけではなかったのかもしれない、壊れゆく家庭を見ながら、それでも絵を書き続けた僕もどこかおかしかったのだろう……。
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