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マンションからの帰りニヤは表情を変えることなく助手席で外を眺めていた。
少し休憩しようと、小さな公園の脇に車を止めた僕はジュースを二本買い、その一つをニヤにわたした。
「迷惑だったら、この公園にすててけよ」
漸く口を開いたニヤはまるでゴミを捨てることを促すような素っ気ない口振りでそう言った。
「捨てないよ」
シートを倒し、甘ったるいジュースを口に運びながら答えた僕にニヤが少しだけ意外そうな顔をする。
「猫は好きなんだ、だけど猫アレルギーでね」
不意に出た僕の言葉の真意を理解できず怪訝な顔をするニヤにかまわずに僕は話をつづけた。
「だから、君みたいな猫を飼うのも悪くない」
そう言って笑った僕の顔をニヤは真剣に見つめていた。
本当はもっとちゃんとした言葉をかけたかった。
けれど言葉が見つからなくて。
やっと出た僕の幼い告白にけれどニヤは笑っていた。
最初で最後かもしれない、ニヤがあんなに僕のことを意識していたのは。
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