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季節はあの頃と同じ八月にさしかかっていた。
夕暮れ時、窓からキツい夕日が差し込めるリビングで僕はワインを傾ける。
安物の白ワインは多少ぬるくなっていて喉にイガイガと突き刺さったが、僕は別段気にせずに飲み下していた。
眩しいのだろうか、僕の膝の上で寝ていた黒猫が形の良い眉をしかめた。
瞼を重たげに上げた僕の愛猫……ニヤはまだどこか虚ろな瞳で僕を睨むと、僕の首に手を回し唇をペロペロと嘗めてくる。
「酒くせー」
整った顔立ちに似合わぬ乱雑な口調でそういって僕を見たのは一瞬だけだった。
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