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ここの画廊に絵を預けるようになった当時は両親のゲスな勘ぐりのせいで彼女にも随分と嫌な思いをさせてしまった。
「先生、そろそろ個展でも開かない?」
出されたお茶を飲む僕に森川さんは何時もと同じ文句を投げかける。
「個展……ですか?」
「玲君がそういうの興味ないのは知ってるのよ。 けどウチの社長も楽しみにしているし、ね?」
「ええ……ですがこの間、画集をだしたところですし、僕としてはもうしばらくゆっくりと作品を仕上げる時間をいただければと」
言葉を選びながら話す僕に彼女は溜め息をもらすと「今日も口説きそこねたわ」と悪戯ぽく笑った。
「すいません」
謝る僕に「この間、雑誌の取材うけてくれたから許してあげる」と森川さんは微笑んでくれた。
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