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「ちょっと待ってね」
考え込む僕に彼女は鞄をゴゾゴソとあさりだして、ペンケースのような物を取り出した。
そこにはフレーム無しの眼鏡が収まっていて。
「ほら」いいながら目にあてがう。
「矢野さん!」
思わず声を上げた僕に矢野さんは安心したように笑った。
「すっかり変わってしまって分からなかったよ」
「あれから二年……三年くらいたってるから、しょうがないよ。でも眼鏡かけても分からなかったらどうしようかと思っちゃった。 それにしても、久しぶりだね。 玲君、突然居なくなったから」
高校三年の夏、僕は高校を辞めた。
もともと休みがちだったし、勉強自体嫌いでなかった僕は、知識だけならあとからどうにでもなるだろうと考えていた。
なによりも、早くあの家を出たかったのが大きかったが。
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