6 雨と香り (前)

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6 雨と香り (前)

真っ直ぐ目を見つめればフワリと笑う、その表情があまりに綺麗で、いつも目を逸らしてしまう。 もっと見たいのにみれなくて、だから、彼の心を写すような空の絵を眺めるのだ。 「でもあの絵はあげられないよ」 違う。 欲しいのは絵の方じゃない。 そう思って睨んで見てもかえってくるのは寂しそうな笑顔だけで。 彼が望むのは自分じゃない。 だから演じる。 気ままな猫を。 彼に捨てられないために。
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