鬼灯 physalis ～ 空猫と画家 編 ～

6 雨と香り （前）

十数人が座れる程度の、その小さなイタリア料理店はリストランテよりずっと家庭的で大衆的な雰囲気だが、それでもニヤにとっては仰々しい、落ち着かない空間らしく、終始居心地がわるそうな様子だった。

家から歩いていける距離にあるこの店は車の心配をしないでワインが飲める数少ない店で、僕のお気に入りだったが、どうやらニヤにはあわなかったようで。

「ニヤも好きになってくれたら」と思っていた僕は内心がっかりしながらも、別の店を探すには遅い時間だったため、とりあえずニヤの好きそうなパスタと肉料理を頼んで、僕は適当なチーズとブルスケッタでワインを傾けていた。